「見本誌」というと聞きなれない言葉ですが、出版業界では基本の知識です。これからライター・編集や写真の仕事をする人は知っておいて損はないので、押さえておくようにしましょう。出版業界に就職したい人も、ぜひ参考にしてください。
見本誌とは?
「見本誌」というのは、本番の印刷物が納品される前に届く、刷り上がり見本のことです。
もうすでにこの状態では印刷された紙がきれいに製本されて「本」の状態になっています。
本番印刷も同様の条件で印刷されていますので、本番と仕上がりはまったく同じです。
つまり、見本とは言いますが、先に刷り上がってきた一部の本を、先行して納品してもらうイメージですね。
そのため、見本誌の色が気にならない、誤植などのミスがあった、という場合にやり直しはできません。(乱暴な話、印刷費を同額追加で払えば可能ですが納期は遅れます。すでにこの時点では書店への納期が確定していることが多いため、現実的にはほぼ刷り直しできません)
見本誌を届ける理由
なぜ、修正できないのに見本誌が必要なのかというと、少しでも早く見たいからです。
発売前の「週刊少年ジャンプ」を待つ小学生みたいな心境ですね。
というのは冗談です(笑)。
「見本誌」は、書店に本を配ってくれる取次業者(ニッパン、トーハンなど)に、事前に納品する必要があります。また、編集者であれば見本誌を確認した上で、著者やお世話になった方々、クライアントに届ける必要もあります。
なぜかというと、見本誌の次の段階では本番の印刷物が納品されることになるため、急いで郵送しないと発売後に本を届けることになってしまうからです。
以下は、以前運営していたブログに掲載していた文章です。
初めて写真集の見本誌を受領したときの心境です。
著者や関係者にとって、見本誌が届く日は少し特別なんです。
見本誌ができた!受領日の心境をつづります
本日早朝、ついに写真集の見本誌が上がってきた。
ちなみに、書籍や写真集の場合、流通する部数が決定する前に、各所に提出しなければいけない「見本誌」というが必要になります。とりあえず今日、届いた分は30部。
まだインクが乾かないので、残りの部数は納品日の前日までに出来上がる予定とのこと。
じつは朝、印刷会社から納品されるはずの見本誌が時間通りに届かない...というアクシデントがあり、ヒヤヒヤだった。
出版の世界には長い間携わっていますが、運送会社から運ばれてくる本を待つ時間というのは、不思議とリアリティがありません。
今日も「本当に自分の本ができるのかなぁ」と半信半疑で待っていました。印刷、製本の過程を見学に行ったこともあるけど、Macの画面で見ていたものがなぜ印刷物になるのか、いまだによくわからないんですよね。
でも今日、手にすることができたのは、まぎれもない自分の写真集です。
30部のうち、ほとんどは見本として配り、残りはもしもの時のため発売元に保管してあります。
うち手元にわけてもらったのは3部。そのうち、午後2部を資料として某社にお渡ししたので、いまのところ自分の手には1部しかない。それでも、貴重な1冊だ。
つぎは20日の刷了を待つことになる。無事、何も事故がなければ流通に乗り、年内には全国書店に届くと思います。顛末はその都度、追ってリポートします。
後日追記:
前回、注文書店をUPしましたが、HMVにも配本してもらえそうです。(詳細はまだ未定)
あとがき
今回は出版業界のマメ知識、「見本誌」についてまとめてみました。
「見本誌の仕上がりっていつ頃ですか?」って尋ねると、「こいつプロだな」って感じです。
折に触れて、別の用語も解説していますのでお楽しみに。