天板(てんばん・テンバン)は、おもに写真や動画の撮影で使用する板のことです。
以前、本ブログで「天バン(天井バウンス)」という用語の解説をしたのですが、すごく似ていてややこしい言葉の「天板」。いったいどんな撮影のときに使うのか、どのような種類があるのかを今回は解説していきます。
目次
天板とは?
冒頭に触れたように、天板は「てんばん(テンバン)」と読みます。
おもに、商品撮影(ブツ撮り)や料理撮影の際に使用する板のことで、撮影する対象物(被写体)を載せる「板」のことを指します。
とても似た用語の「天バン」は「天井バウンス」という写真のライティング技術のことを意味するのですが、この場合の「天」は天井のこと。
「天板」は、テーブルトップというか、家具の専門用語からきています。
たとえば、テーブルや机をオーダーでつくったり、DIYでつくったりするときには「板」と「脚」が必要ですが、脚の上に載せる板のことを「天板」と呼び、意味は同じです。
どんなときに使う?
商品撮影(ブツ撮り)や料理撮影を行う際には、なくてはならないものです。
特に「イメージカット」と呼ばれる撮影では、背景や小道具に何を使うかで、その写真の雰囲気が大きく変わります。
打ち合わせの際にはいろいろな撮影の構成要素を決めていくのですが「天板は何を使うか」というのは結構重要なんです。
天板のサイズ
基本的には、900mmx900mm(90cmx90cm)のサイズが基準になっています。
なぜかというと、じつは明確な理由があります。
1800mmx900mmの板のサイズを「サブロク」というのですが、これは一般的な建築物に使用される建材のサイズになります。(3尺x6尺のサイズ)
これを真ん中で2つにカットすると、900mmx900mm。
実際には80mmx60mmやその他のサイズもあるので、絶対に900mmx900mmでなければいけない、というわけではありません。
ただ、「900mmx900mm前後」の天板が多いのは事実なので、まずはこのサイズの板を探してみるといいでしょう。
グループショット(複数の商品をまとめて撮影する場合)には、横幅が足りなくなるときもあるのですが、そんなときには横幅の長い天板を使用します。
天板の厚さ
明確な基準はないのですが、よくあるベニヤ板やコンパネ、合板の厚みは9mm、12mmといったものが多いです。あまり重いものを置かないときには9mmでもいいのですが、撮影物が重いと9mmではすこし沈んでしまうことがあります。なので、僕のスタジオでは12mm以上の厚さの天板を使用しています。
天板の種類
天板にはいろいろな種類があります。「これを使わないといけない」というルールはないので、背景に使用できるとフォトグラファー(もしくはクライアント)が考えれば、どんなものでも使用できます。
今回は、一般的に人気がある天板の種類をいくつかご紹介します。
板目(いため)
木目(もくめ)とも呼ばれます。一番オーソドックスな定番の天板になります。無垢材とも言われます。
種類がかなり豊富なため、複数揃えておくと便利です。
ナチュラル
オーク
ウォールナット
メープル
シダー
大理石
最近、人気の天板です。マーブル調、マーブル柄、石目(石目調)などとも言われます。ビューティ、料理をはじめ、さまざまな撮影の背景に使えるので便利です。
本物の大理石を使用するとものすごく高価になってしまうので、大理石風のシートを使用することが多いです。モノトーンの大理石風のものが一般的ですが、黒っぽい大理石、ベージュ系、ピンクの大理石などいろいろな種類があります。
タイル
清潔感があるので、ビューティ系(美容商材、化粧品など)の撮影でよく使われます。
モザイクタイルなどが特に人気です。
漆喰(しっくい)
おもに塗り壁材として使われる建築材料です。清潔感がありつつ、手塗りのアナログなテクスチャー感が魅力です。特に、自然光の撮影との相性がいいです。
一般的には、漆喰の天板は販売されていないので、自作する必要があります。
コンクリート
モルタル、セメント風の壁をイメージした天板です。クールで緊張感のある印象を与えることができます。
本物のコンクリートやモルタルを使うとものすごく重くなってしまうので、大理石と同じくコンクリート風のシートを使うことが多いです。コンクリート風のペイントができる塗料も販売されています。
デコラ
もともとは建築用の建材ですが、高級感があるので商品撮影などでよく使われます。基本的なサイズはサブロク(1800mmx600mm)です。
わりと高価なので最初はなかなか購入するのが難しいのと、使用時にキズが入りやすく消耗品なので、定期的に買い直す必要があります。
「黒デコラ」が一番利用されています。
どうやって手に入れる?
残念ながら、撮影用の天板を販売している会社はほとんどありません。
周囲のフォトグラファーに聞いても、自作している人が多いようです。
僕の場合も自作したり、他の用途(撮影以外の用途)の板を扱っているメーカーさんに問い合わせたりしています。
具体的な入手方法は企業秘密になってしまうのですが、うちのスタジオはまあまあいろんな種類の天板を置いている方なんじゃないのかな?と思います。
本当はモザイクタイルなども自作したいのですが、なかなか製作する時間が取れず、難しいですね。
毎年、少しずつ種類を増やしています。
自作しない場合は、撮影用のリースショップというところでリース(レンタル)するのが一般的なのですが、おしゃれな天板は結構費用が高いんですよね。
大体、2泊3日で8,000円以上(安くても6,000円以上)なので、リースの予算が別途確保できる撮影でないと難しいかな?と思います。
あとがき
今回は、撮影の際に使う天板について解説しました。本当にたくさんの種類があるのですべては紹介しきれませんが、機会があれば徐々に情報を追記していきたいと思います。
意外と知られていませんが、商品撮影や料理撮影にはすごく重要な小道具のひとつですので、参考になれば幸いです。