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写真賞を受賞すると、撮影の仕事は増えるの?【実体験をレポート】

2020年4月23日

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写真賞を受賞すると、撮影の仕事は増えるの?【実体験をレポート】

2020年4月23日

写真業界には、いくつかの写真賞(コンペティション)があります。有名な賞を受賞すると、仕事は増えるのでしょうか。31歳のときに写真賞を受賞した僕が、実際の体験談をまとめてみます。

フォトコンテストとの違いは?

一般的には「阿蘇山フォトコンテスト」「柴犬好き大集合!写真コンテスト」みたいなものの方が身近ですよね。
写真&カメラ業界では、プロ(またはハイアマチュアと呼ばれる意識の高いアマチュアフォトグラファー)向けの写真賞(コンペティション、以下コンペと表記)と「コンテスト」ははっきりと区別されています。

「コンテスト」と題されているものはほとんどがアマチュア(写真愛好家)向けのものが多いです。「自分が撮った写真を、だれかに見てほしい」というユーザーの要求に応えるために企画されています。
テーマは風景、花、家族、鉄道といったものが中心です。
写真賞、コンペは若手写真家・フォトグラファーの育成を目的としています。

なぜ写真賞(コンペ)に応募するのか?

多くの写真賞は、業界内において権威のある写真評論家や編集者、美術関係者、写真家などが審査員をつとめます。
つまり、目利きのできる専門家が選んだ作品だから、ということで客観的な評価が下され、箔(ハク)をつけることができるわけですね。
いわゆる名刺代わりというやつです。
また、グランプリ受賞者は賞金をもらえたり、無料で写真展を開催する権利が得られたりする(会場費とプリント代を主催者が負担)というメリットがあります。

僕が受賞した写真賞は?

富士フイルムが主催していた「富士フォトサロン新人賞」という賞です。10年ほど続いていたと思います。
当時、2000年代中頃の写真賞としては、三大新人賞のひとつ(と勝手に思い込んでいた)でした。

当時有名だった写真賞

・写真新世紀
・ひとつぼ展(1_WALL)
・富士フォトサロン新人賞

ただし、どの分野でも「三大」というのは3つ目があやしい感じなんですよね。
僕は九州・熊本出身です。うちの地元には、築城の名手である加藤清正がつくった熊本城があり、熊本人はみんな大好きです。
この熊本城、全国の「三名城」のひとつに数えられることもあるのですが、城の規模感では「姫路城、名古屋城、大阪城」の3つで、江戸時代の評価は「大阪城、名古屋城、熊本城」、いやいや近代以降は「姫路城、名古屋城、熊本城」でしょ、のようにいろんな説があります。
もちろん、僕の中ではいつでも「熊本城」が全国ナンバー1です。

話は少しそれましたが、富士フォトサロン新人賞。
いずれにせよ、それなりに業界内では有名な賞だったのは間違いありません。

写真賞を受賞した結果…!

優秀賞受賞者3名のうちの1名として選ばれました。当時は約1年ほどいろいろな賞に応募していて、別の写真賞の最終選考にも残っていたのですが、そのときはやむなく落選。さらに点数を増やし、内容をブラッシュアップした作品で受賞できたので、受賞の電話をもらったときは、震えるほどうれしかったですね。
受賞後は、全国3カ所(東京、大阪、福岡)の富士フォトサロン(現富士フイルムフォトサロン)で写真展を開催。
写真展の費用(会場費、プリント製作費用)はすべて富士フイルムさんに負担していただき、無料でした。

受賞後に仕事は増えた?

結論から言うと、「ほぼ増えなかった」です。
そこそこの知名度があった賞ということもあり、受賞後は人生が変わるかも?みたいな期待があったのですが、そんな奇跡は起こりませんでした…。

ただ、ある音楽雑誌の編集長が展示期間中に見に来てくださったのはうれしかったです。
その後に、表紙と中面8ページの撮影を依頼されました。被写体は田島貴男(オリジナル・ラブ)さん。編集長からは「自由に撮っていいよ」と全面的に任されました。

また、この頃お仕事をいただいていた出版社の社長に後日サポートしていただき、全国書店で発売する写真集を出版することができました。

いずれも「受賞=案件」につながったものではなく、受賞前からのお付き合いがあった方々です。受賞&開催が決まったときに、A4サイズで写真展の案内状を作成し、150名以上に送りました。
はがきの印刷費と郵送代で3万円以上はかかったと思います。
案内状は、一度もお会いしたことがないデザイナーさんにも郵送しました。仕事にはつながらなかったものの、後日「すごいね!がんばってるね!」と激励の電話をいただきました。
展示のはがきに電話番号も載せていたので。若手時代は仕事なさすぎて切羽詰まってましたからね…。

授賞式後の懇親会では、写真業界の重鎮(カメラメーカーのお偉いさん方や、雑誌編集長など)と名刺交換する機会がありました。
そこから、ある雑誌の編集長にお会いする機会をいただき、「100名の写真家特集」の掲載へとつながることになります。

また、受賞後すぐではなく、数年が経ってから富士フイルムの方とお会いしたときに「じつは新人賞を受賞したことがあります」という話をしたところ、会話が盛り上がったのを覚えています。
いま振り返ると、多少なりとも何かのきっかけになったのかな~と思います。
富士フイルムさんとはその後、一緒に何度もお仕事をするようになります。

受賞のメリット

受賞したからその後すぐに大ブレイク!とはいかなかったものの、いくつかのお仕事をいただき、人脈らしきものも少しは広がりました。
ただし、受賞しただけでは「何も変わらなかった」という写真家も多くいることは事実です。
著名な賞の受賞は、いわゆる「名刺代わり」です。
いずれにせよ、「自分から広げよう」という努力が必要です。

直接的なメリット以上に、客観的な評価を得たことで「自分の中で何かが変わった」という意識を得られました。
一番大きかったのは、自信がついたことですね。
フリーランスに成り立ての頃は、写真を見せてもまったく評価されないことが多いです。編集者に会ったときに、

「どうせ素人同然なんでしょ。すでに有名な写真家とはたくさん仕事してます。アンタはしょせんゴミ以下」

(映画「プラダを着た悪魔風」)

みたいな態度をリアルに取られてそのたびに心が折れそうになったり、ムカついたりしていましたが、

「人の評価はそれぞれ。必ず、自分の作風を評価してくれる人はいる」

と胸を張れるようになりました。

同時に、「賞をもらったのだから、その名に恥じない活動をしないといけない。ジッチャンの名にかけて!(あれ…なんか違う 汗)」と決意を新たにしました。

写真賞を受賞するには?

これは難しいですね。
TOEICや英検などの試験は受験データが多いために明確な攻略法が存在しますが、写真の場合はアートなので、「こうすれば高得点が狙える」といった絶対的な攻略法はありません。
ただし、傾向と対策は存在します。過去の受賞作品の傾向と、自身の作風、審査員の好む作品などを自分なりにリサーチする、ということは最低限必要です。

受賞はスタートライン、継続した努力が必要

今回は「写真賞を受賞したことによって、仕事は増えたかどうか」を、体験談をもとに振り返ってみました。けして大きな成功にはつながりませんでしたが、いまでも名刺がわりに自分のプロフィールに「富士フォトサロン新人賞」と書けることは強みです。
ただ、賞をもらったあとに活躍をしているのは、継続した努力をし続けている人がほとんどのように感じます。まさしく、「受賞はスタートライン」という感じですね。

いずれにせよ、「周囲の人と自分を、どうやって差別化するか」はフリーランスとして生きていく上で重要な要素のひとつです。
受賞ばかりがすべてではありませんが「自分なりのやり方」を目指すことがきっと大事なんだというのが、僕の結論です。

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Atsushi Yamada

Atsushi Yamada

写真家。ときどきディレクターもやってます。 ワーホリ渡豪、20代で出版社立ち上げてフリーに。 英会話は日常会話レベル。都内の自社スタジオに棲息。 ブログでは写真や文章、クリエイティブ全般について語ってます。

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