フリーランスのフォトグラファーとして独立する際には「作品撮り」を行う必要があります。特にファッションやポートレート撮影を仕事にしたい場合は、モデルを起用した撮影が一般的です。本稿では「作品撮り」の詳細について解説します。
作品撮りとは?
「作品撮り」は、本格的にプロフォトグラファーを目指す人が取りかかる撮影です。英語ではテストシュート、あるいは略して「作撮り(さくどり)」ということもあります。
おもに、ファッション撮影やポートレート撮影、つまり人物=モデルを被写体にしての作品をつくることを指します。
作品撮りを行うためには、モデルはもちろんのこと、ヘアメイク、スタイリストといった優秀なスタッフが必要です。
チーム集めからスタートし、事前の打ち合わせを各スタッフと行いつつ、撮影当日を迎えます。
仕上がりのイメージは、撮影日までに練っておくのが一般的です。屋外で撮る(ロケ撮影)のか、スタジオを借りて撮るのか。集合場所や時間はどうするのか、何カットぐらい撮影するのかなど、さまざまな段取りを進めておく必要があります。
作品撮りの魅力
一番の魅力は「チームでひとつの作品をつくる」ことです。
フォトグラファーの世界観だけで作品を撮ることはできますが、そこにさまざまな個性が加わることで、1+1が3以上になるのが面白さです。
現場で創意工夫を行うことで、思いもよらない作品が出来上がることもあります。
また、「作品撮り=テストシュート」を行うことで、アシスタント時代には気づかなかったいろいろな面が見えてくることがわかります。
作品撮りの機会を通して、現場慣れすることは非常に大事です。撮影の依頼がきた際、戸惑うことなくスムーズに現場を仕切ることができるようになります。
なぜ作品撮りが必要か
フォトグラファーの場合、独立して写真の仕事をするときには、まず最初に名刺をつくります。
そして、必ずといっていいほど聞かれるのが「どんな写真を撮っているんですか?」という質問です。
当然ですよね。
そのときに見せられる写真がひとつもないと、仕事の依頼は舞い込んできません。
作品撮りを始めるタイミング
早ければ早いにこしたことはありませんが、たとえばフォトグラファーの専属アシスタントとして働いている期間には、まとまった時間があまり取れません。
平日はもちろんのこと、土日に撮影を行おうと考えていても、平日の疲れがたまって家で寝てるだけ…あるいは土日も撮影やレタッチ(画像調整)の作業が入ってしまっている、というケースが多いからです。
仮に撮影が入っていなかったとしても、専属アシスタントの給与は一般的な会社員に比べて低い傾向にあるため、土日には別のバイトを掛け持ちしている…という場合も少なくありません。
そういうわけで、専属アシスタントを卒業するか、中途で辞めて時間的な余裕ができてから作品撮りを始める、という人の方が圧倒的に多いと言えます。(近年では、以前より休みをもらいやすくなっていますが、ケースバイケースです)
仮にアシスタントを経ずにプロフォトグラファーを目指す場合、土日を中心に作品撮りを行うことになります。
無料でスタジオを使用できることも
スタジオマン(商業写真撮影のスタジオスタッフ)として働いていると、空き時間にスタジオを無料で使用できることがあります。
入社時に「作品撮りが可能かどうか」を聞いておいた方がいいです。
たとえば、プロが利用する白ホリゾントと呼ばれるスタジオは、平均的に1時間1万円以上の使用料が発生します。5時間利用すると、5万円。
そのぶんの費用が無料になります。
ただ、当然のことながら「スタジオが空いているときに限る」「業務時間外のみ利用可能」というところが多いです。
必然的に利用できる時間は夜遅くか、または土日祝日などの撮影が少ない日になります。
(商業撮影は平日に実施されることが多いため)
作品撮りのルール
・データを送る
撮影後、データやプリントを渡します。RAWデータを渡すことは(おそらく)滅多になく、色味の調整や肌修正を行ったあとでJPEGデータなどを送るのが一般的です。
どれくらいのサイズのデータを送るかは、事前に決めておいた方がトラブルが少ないです。
後日、「もらったデータのサイズが小さかったので再送してほしい」という話も結構あるので、あらかじめ確認しておきましょう。
また、すべての写真を送るのか、選んでレタッチした写真(採用カット)のみを送るのかなどもしっかりと決めておく必要があります。
・全員ノーギャラ
みんなで集まって作品をつくるため、基本的にはノーギャラです。
ですが万が一、スタッフの誰かが「仕事」と考えてきていると、撮影後にお金をもらえると思っていました…という話にならないとも限らないので、事前に確認しておきましょう。
・経費配分を決めておく
1回の撮影にかかった経費は全員で折半する、という場合もあれば、基本的に経費はフォトグラファーが支払う、というケースもあります。
例えば外部スタジオを借りたり、小物などを手配したりするときには費用が発生します。
お金のトラブルは極力避けた方がいいので、クルマで移動した際のガソリン代はどうするのか、駐車場代は?ごはんを食べたときのランチ代は?など、細かい部分を撮影前につめておいた方が安心です。
ちなみに僕は、基本的に「経費一式を自分で負担する派」です。
ヘアメイクさんはメイク道具代、スタイリストさんは洋服集めにかかった費用、モデルさんはスタイルや肌のコンディションを維持するための美容代など、見えないところに経費がかかっており、仮に割り勘にする場合もでもどこまで割るのか?という判断が難しいのが理由のひとつです。
みなさんに過度な負担を強いるのは申し訳ない、と感じますし。。
また、撮影した写真の著作権はフォトグラファーのものになるので、そういった点でも「すべての経費を均等に割る」ことが正しいかどうかは、難しいところです。
あとがき
今回は、作品撮りに関しての基礎知識をまとめました。
複数のスタッフが力を合わせてひとつの作品をつくる共同作業は、ひとりで行う撮影とは違った魅力があります。ぜひチャレンジしてみてください。