雑誌やムック本を制作する上で、欠かせない工程のひとつが「ラフ作成」です。新人編集者にとっては「わかりやすいラフを描くこと」が編集者としてのファーストステップになります。今回は、誌面の編集に欠かせないラフ作成について、紹介します。
ラフってなに?
紙媒体、つまり雑誌や、ムック(特定の趣味分野などをまとめた特集本)などにおいて、重要となる工程があります。 出版社のホームページに「ムック」や「ムック本」と書かれていて、疑問に感じたことがある人も多いはず。雑誌との違いも合わせ、「ムック」とは何か?について解説していきます。書店業界における、専門的な知識にも ... 続きを見る
「ムック」ってなに?という方は下記の記事をご覧ください。
ムックとは?雑誌や書籍との違いを詳しく解説
最初に行う作業としては「台割」の作成があります。台割は、本づくりにおける「設計図」のようなものです。 雑誌やムック、カタログなどの本をつくるためには、テーマやコーナー企画の立案以外にも、さまざまな準備が必要です。中でも、重要な設計図となるのが「台割(台割り・だいわり)」と呼ばれるもの。 今回は、紙媒体 ... 続きを見る
「台割」ついてはこちら。
「台割」とは?雑誌やカタログなどの設計図【編集者の基礎知識】
台割で各ページの役割が決まると、コーナーごとにラフを作成する必要があります。
台割が設計図であるのに対して、ラフは「図面」のようなものです。
どこに記事タイトルが入るか、本文はどこに入るか、全体で何文字くらいの分量になるのか、写真は何点、どのように掲載するのか、ということを記していきます。
WEB制作では、同様のものとして「ワイヤーフレーム」があります。
こちらもどこにどの要素が入るかという、ページ全体の「図面」のようなものです。
ラフの種類
編集者が描くラフですが、ざっくりわけると2種類あります。1つは手描きの形式、もう1つはパワポやイラストレーターなどのプレゼンテーションソフト、グラフィックソフト作成した線画形式のものです。
グラフィックソフトで作成したラフの方が見栄えがいいのですが、ラフの場合、「どこにどの要素が入るか」というのが明確にわかることが重要なので、どちらかというと丁寧につくるというより、スピード感が大事です。(丁寧につくる作業は、デザイナーが担当します)
ラフの描き方
手書きのラフですが、真っ白な紙に描く場合と、方眼紙に描く場合があります。
昔ながらのやり方は、方眼紙タイプにものさしとえんぴつで書き込んでいく方法ですが、時間がない編集部では白い紙にささっと書いてつくります。
ラフを描くときには、なるべく誌面と同じ判型の紙を使用した方が出来上がりをイメージしやすく、間違いが起こりにくいです。雑誌やムックなどはA4もしくはA4変形(タテヨコどちらかの長さが異なる)が多いので、特に慣れるまではA4サイズの紙に二分割、または4分割にして書いた方がいいでしょう。
2ページ以上の企画では、通常見開きの状態でラフを描きます。コーナーのタイトル、見出し、本文、写真の位置などを全体のバランスを見ながら記載していきます。また、写真の説明文となるキャプションも大切な要素です。
ラフが出来上がったら、先輩編集者や編集長など、上長にチェックしてもらいます。問題があれば大幅に修正する必要が出てきます。
自分が企画したネタで、しかも全身全霊を込めて描いたラフを、思いっきり手直しされる…というのは編集者あるあるです。いわゆる「ちゃぶ台ひっくり返し」ですね。
年末進行で睡眠時間もきちんと確保できていないときにられると心が折れそうになります(笑)。
ここで折れずにがんばった人が一人前の編集者になります。
同様のシーンは、映画「プラダを着た悪魔」などで見ることができます。編集に興味がある人にはおすすめの1本です。
なぜラフを作成するか1:スタッフとの情報共有
頭の中にあるページのイメージを、複数の人と共有するためです。
ラフの作成には先割(さきわり)と後割(あとわり)があり、ファッション誌など写真を大事にする雑誌の場合は取材日・撮影日までにラフを作成し、事前に各スタッフへメールなどでページ構成を伝達するのが一般的です。
また、事前の打ち合わせでも細部を確認します。特にスタイリストは洋服を何点リースするのか、明確な指示が必要ですのでラフの作成は重要になります。
取材日や撮影日の当日にはページの各要素を編集者がチェックし、撮影漏れがないかを確認します。また、ライターにも文字数の指示をして、締切日を伝達します。
中には「取材をしてみないと、どんなページになるかわからない」というケースもあります。その場合は後割でラフを切ります。
ただ、事前に指示がないと当日の取材内容がぐだぐだになり、インタビューの聞き漏れや撮影漏れが起きてしまうこともあるので、注意が必要です。
なぜラフを作成するか2:デザイナーへの指示
ライターやフォトグラファー、スタイリストといった各スタッフへの連絡に加えて、デザイナーへの指示にもラフは重要な役割を果たします。
ラフと素材(写真や原稿)をデザイナーに送り、ラフには写真と原稿に対応する番号を振って(A~Z、1~10など)指示をします。
デザイナーはその指示を見ながらページのデザインを進めます。
素材がすぐに揃わない場合、原稿の一部などをあとで送る(後送)場合もあります。
今回は、紙媒体を制作する上で大事な「ラフ」についてのお話をまとめました。
最近は紙モノの仕事が減っているので、なかなか編集スキルを学ぶ機会もなくなってきているのが残念です。
編集者は、才能ある多くのスタッフをまとめる指揮者のような存在です。
ラフ作成ができるようになると、コンテンツの方向性や細部を決める「ディレクション力」が身につきます。
紙媒体に限らず、WEB制作やイベント制作、新規事業の発案・構築までさまざまなことに生かせるスキルの基礎なのです。