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撮影アシスタントが昔は無給だったって話

2020年8月15日

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撮影アシスタントが昔は無給だったって話

2020年8月15日

写真や動画など、撮影業界はもともとブラック業界として知られています。いまではだいぶ改善されているものの、「アシスタントは無給からスタート」という時代が長く続いていました。今回は写真業界独特の徒弟制度について、自身の経験を交えながら振り返ってみます。

まず簡単に時代背景から

僕が写真業界に入ったのは20代の頃。インターネットはありましたが、まだまだフィルムカメラ全盛期。「撮ってすぐに確認する」ということができなかった時代です。
その後にデジタルカメラの進化が進むわけなのですが、決定的に業界の流れが変わったのが2005年のEOS 5Dが発売されたとき。
仕事で使える画質で手頃な価格帯のカメラだったっため、撮影ワークフローが一斉にデジタルへとシフトしました。
その後、デジタルの普及が進むとともに撮影技術の習得が簡単になり、現在にいたります。

撮影業界=徒弟制度だった理由

理由はいくつかありますが、まずひとつは前の項目に挙げたように、フィルム時代は「撮ってすぐに確認する」ことができなかったから。
撮影時だけでなく、場合によっては暗室でプリントして納品という技術まで習得する必要があり、ネットで学んでどうにかなるものではありませんでした。
そのため、師匠にずっと付いて技術を学ぶ以外に、プロフォトグラファー(当時は「カメラマン」と呼ばれていました)になる方法はなかったわけです。
ほかの理由としては、カメラマンのギャランティ(報酬)が高かったから。技術者の人数が少なく、いまよりも高額の報酬がもらえていたため、何年か我慢して独立すれば年収1000万円も可能、という夢があったからこそ、みんな暗い修行期間を耐えてがんばることができました。
現在のカメラマンの平均はいくらぐらいでしょうか。年収300万円とか?いずれにせよ、かなり少なくなっていることは間違いありません。

撮影アシスタントの報酬(かつての相場)

特定のカメラマンの専属アシスタント(直アシ)につく場合、無給からのスタートという場合も少なくありませんでした。
売れっ子の先生は、断ってもアシスタントが集まるため、4~5人のアシスタントを抱えるということはザラ。全員の給与を払うことはできません。実際には払うこともできたのかもしれませんが、技術がなく荷物運び程度からチームに加わる場合、「給料をください」という風にはなかなか言える状況ではありません。
もらえても月2~3万円程度からスタートという感じです。
その後、いろいろな仕事を覚え、先輩が辞める(脱落)もしくは卒業するとランクが上がり、月5~6万程度、最終的には月10~15万円、というのが一般的でした。月20万円以上を払っていたとしたらその先生は「すごくやさしい人」でした。

撮影業界の現状

現在では、写真撮影自体のハードルが低くなり、撮影単価が安くなったことによって、全盛期に比べてカメラマンの年収もかなり下がっています。
以前はいくら無給とはいえ、食事代や雑費などは師匠が負担することが多かったわけですし、結果的に数名のアシスタントを雇い入れようとすると月に数十万の費用が発生します。
現状では、なかなか4~5人のアシスタントを抱えるというのは難しくなっているため、1~2名程度雇うのがやっと、という状況になっています。
また、働き方改革によって、いろいろな業界で徒弟制度が問題視されるようになっているので、しっかりとした金額を払える売り上げがないと、気軽にアシスタントを迎え入れることができません。
このように、

撮影技術のハードルが低くなった

新規参入が容易に

撮影単価が安価になった

業界的にアシスタントを雇い入れる余裕がなくなってきた
「無給からでも勉強させてください」という慣習が許されなくなった

以前と比べて、この変化は非常に大きいなと感じます。

撮影技術を学ぶ機会の減少

昔より簡単になったとはいえ、プロの現場ではまだまだ「撮影=職人」の技術は必要です。特に、ストロボと呼ばれる機材の光を使って撮影する技術や、写真の修正(フォトレタッチ)に関しては、インターネットだけでは学べないことも多いです。
結果的に、フィルム時代と比べてプロの技術を学ぶ機会が減っているために、「簡単な撮影はできても、本当に技術が必要な撮影ができない」と悩む人も増えています。
僕の場合、最初は無給からこの業界に入りました。高校を一度退学して学歴もなかったし、日々、新しい知識や経験を学べる場所を提供してもらえるだけで、ものすごくありがたいと考えていました。
いまでは、その経験があるからこそ、いろんなクライアントさんからお仕事をいただけるようになっています。
もちろん時代の流れもありますが、どちらがいいかは難しいですね。
これはもう業界全体というか、国の構造というか経済そのものの話になってしまうので、現状を変えるのはなかなか厳しいという現実もありますが、夢を叶える環境が減ってしまったのは、なんだか悲しい気がします。

撮影業界の今後

「撮影アシスタントは昔、無給だった」という過去を振り返ってみました。
僕のまわりでは、すでにかつての徒弟制度は崩壊してしまってるという話をよく聞きますが、一部ではまだ存続しているのかもしれません。
10年後や20年後、撮影業界はいったいどうなっていくのか…。いずれにせよ、ただ写真を撮るだけでよかったという時代は終わっているので、個人としていかにプラスアルファの価値を提供できるかが、カギになってくるのではと感じます。

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Atsushi Yamada

Atsushi Yamada

写真家。ときどきディレクターもやってます。 ワーホリ渡豪、20代で出版社立ち上げてフリーに。 英会話は日常会話レベル。都内の自社スタジオに棲息。 ブログでは写真や文章、クリエイティブ全般について語ってます。

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