写真家として、フォトグラファーとして。肩書きはなんだっていいけど、世の中には「〇〇家」が多すぎる。誰だって名乗っちゃえば何かになれる時代だけど、僕が「全国の書店で販売される本」をつくり続けるのには、プロとしての強いこだわりがあります。そのこだわりについて、少しだけお話します。
不特定多数の人の目に触れてこそ「メジャー」
90年代のカルチャー全盛期に青春時代をすごしてきた僕には、「多くの人の目に触れてこそ、プロの仕事」だという自負があります。
書店で雑誌をめくって、飛び込んできた写真。
ギャラリーを訪れて、ふと目にした作品に、ばーんとほっぺたを引っぱたかれたような衝撃。
ある写真家に、紙焼きプリントをプレゼントしてもらった時の、1枚の写真の重さ。
1枚の写真が、人生を変えるという奇跡。
そんな、写真の力を信じているからこそ、多くの人に「作品」を見てもらうことが大事だと考えています。
本をつくることの難しさ・書店流通の難しさ
出版物をつくるには印刷費が発生します。
また、本屋に置かれる出版物は、当然のことながら売れないと返品されます。
流通させるためにも手数料が発生しますが、返品にも手数料がかかります。
売るための本は倉庫に常備されていないといけませんから、そのための保管料も発生します。
(ちなみに、Amazonで本を販売するためには、常に100冊以上の在庫が必要です)
もろもろ含めると、ゆうに1冊の写真集・雑誌をつくるには100万円以上の費用がかかります。
いままで世に出してきた本は20冊以上
まず、最初の写真集「LOVE! LIFE! LIVE!」から。
32歳のときですね。当時、撮影のお仕事をいただいていた出版社の社長が熱い人で「山田さんの写真集を世に出そう!」と協力してくれました。
つぎに、「ストロボフォト・テクニック」という本。これは当時、デジタルカメラマガジンの編集長にお声かけいただいてつくったムック。
ストロボを使って作品をつくるという人が少なくて、そういう人たちのために制作した本です。
そして、フォトカルチャー誌の「SHUTTER magazine」は、僕の事務所が版元として印刷費からすべての経費を負担してつくった初めての本です。3ヶ月に1回・年4回発行の季刊誌として、4年半続けました。現在はWEB版として運営しています。
そして、17LIVEさんと組んでつくった写真集が2冊。ライバー関連は、2021年の3月に新しい写真集を出します。
常にリスクを負って戦うということ
やっぱり、金銭的なものを含めてリスクを負ってこそ、本当の意味での戦いだと思うんですよ。
いちおう出版人としても20冊を超える本を出してきて、これだけリスクを負って本を出してる写真家は何人いるのか?と言いたい。
「写真集」とは名ばかりの、小ロットの本やZINEを出している人も多いですが、そことは比べてほしくないという気持ちは少なからずあります。
あとがき
いまの時代、「こうしなきゃいけない」というルールはありません。
だれだって何かになれる、それはとても素晴らしいこと。
だけど、続けていくことは、世に何かを問い続けることはすごく難しい。
それこそが、僕のプロとしての矜持です。
みなさんがどう思うかはわかりません。だけど、僕はこういう生き方しかできない。
イチ表現者としてすごく不器用かもしれませんが、何かを世に出そうとするたびに協力してくれる人が出てきてくれて、なんとかいまに至ります。
何かを少し感じてもらえれば幸いです。