ファッション写真がうまくなりたい、という人に対して、僕は「できるだけストリートスナップを撮った方がいい」とアドバイスしています。なぜならストリートスナップ撮影には、ポートレートのあらゆる要素がつまっているからです。
本記事を読むことで、ファッション写真がうまくなるための方法がわかります。
ストリートファッションスナップとは?
「ストリートファッションスナップ」または「ストリートスナップ」は、いわゆる「 街角おしゃれスナップ」のことです。東京で言えば、原宿などで撮影を行うのが一般的です。年齢層が上の場合だと、表参道や代官山、銀座といったエリアでの撮影もあります。
基本的には路上で実施することがほとんどで、街を歩くおしゃれな人に声をかけて許可をもらって、撮影を行います。
もともとはファッション誌の企画が中心でしたが、最近はWEBメディアでも同様のコーナーが設けられることが多く、人気企画のひとつとなっています。
もうひとつのスナップと区別するために、「ファッションスナップ」と呼ばれることもあります。(本記事内では、ストリートファッションスナップ、ファッションスナップと表記しています)
もうひとつの「スナップ写真」
対して、本来の「スナップ写真」についても軽く解説しておきます。
「スナップ写真」あるいは「スナップフォト」「スナップショット」とは、日常のふとした瞬間を切り取る撮影手法を指します。
屋外・屋内を問わず、小型のカメラをサッとふところから取り出して撮影を行うスタイルで、撮影する対象は必ずしも人物ではありません。
街の風景や建物の一部、食べ物など、何気なくカメラを向けて撮るだけで、その写真はスナップになります。
こちらも同様に「ストリートスナップ」と呼ばれることがあります。
ストリートファッションスナップの利点
ファッション写真の中で、屋外で撮影するロケ撮影という分野があります。ストリートファッションスナップをたくさん撮っていると、このロケ撮影に便利な要素がたくさん含まれていることがわかります。
・背景を瞬時に選べるようになる
撮影対象は、買い物や待ち合わせなど、お出かけ中の人を撮影させてもらうため、1カットにあまり多くの時間をかけられません。服装に合わせてどんな背景を選べばいいかという訓練になります。
・背景のバリエーションが増える
・歩行者のいない状況で撮影する
週末の繁華街ではたくさんの人たちが行き交います。邪魔にならないように撮影するために場所を見つけるなど、工夫が必要です。また、歩行者のいない瞬間を狙って手早く撮ることも重要です。
・モデルへの指示がうまくなる
プロのモデルではなく、あまり撮影経験がない人を対象に写真を撮ることになります。ポーズの指示をうまく行わないと、棒立ちになってしまったり、バランスの悪い立ち方になったりするときがあります。
撮影慣れしていない人への指示の出し方がうまくなります。
・洋服の見せ方がわかる
写真そのもののクオリティだけでなく、「洋服のよさ」をうまく伝えることも重要になります。例えばボタンやエンブレムなどが特徴的なのに、いっさい写っていなかったとしたら「使えるカットが1枚もない」ということになります。雰囲気のいい写真を取りながら、洋服やスタイリングの魅力も伝えることが求められます。
・人物と背景の両方に気を配れるようになる
人物撮影に慣れていないと、どうしても人物(被写体)の顔だけに注意が向いてしまいがちです。パンツのすそがめくれ上がっていないか、足元にたばこの吸い殻が落ちていないかなど、細かいポイントに気づくことができるようになります。
・アングル(カメラの高さや角度)について理解できる
ファッション撮影では、カメラ位置、つまりカメラの高さや角度が非常に重要です。ファッションスナップの写真は仕上がりが1枚の絵として完成されている必要があるので、カメラの高さや角度についての知識が深まります。
・標準、広角、望遠による写り方の違いがわかる
最近の一眼レフやミラーレスカメラを購入すると、標準ズームレンズがついてきます。何も考えずに標準ズームレンズを使ってしまうと、標準、広角、望遠といった画角による絵の違いを理解することが難しくなってしまいます。ファッションスナップの撮影時に画角を「〇〇mm」と決めて撮ることで、画角による絵作りの違いを学ぶことができます。
・ボケの知識が身につく
ファッションスナップ撮影に、背景がごちゃごちゃして邪魔な時には、少しぼかして撮る必要があります。「F値が〇ならこれくらいボケる」という知識が身につきます。
このように、ストリートファッションスナップには、ポートレート撮影に必要なほとんどすべての要素が含まれています。
撮影時のポイント
必ず撮影のたびに、ひとつでもいいので新しいテーマを追求するということが大事です。
たとえば「今回は背景のボケを調整してみよう」「今回のカットはふだんとは異なる角度から撮ってみよう」といった具合です。
1回の撮影で、少しでも自分が成長できたと感じられれば、つぎにつながります。
ストリートファッションスナップというと、ただ路上に人を立たせればOK、という風に感じる人がいます。
たとえば、アシスタントや若手スタッフでも「人物撮影が好き」という人に2~3回撮り方を教えたとしても、すぐに飽きてしまうときがあります。
でもじつは、仕事って「飽きたな」って思った先に本当の成長があります。
新しい発見があれば、飽きることはありません。
ストリートファッションスナップを撮るには?
雑誌やWEBメディアで撮影を行うことが一般的です。ファッション誌に限らず、カルチャー系のムック本(アウトドア関連など)などでも企画が掲載されることがあります。
雑誌の撮影だとハードルが高いかもしれませんので、ファッションスナップ企画に力を入れているWEBメディアで経験を積むのがいいでしょう。たまにサイト上でスタッフの募集が行われる場合があります。
大学などでは「ファッションスナップ撮影サークル」を組んで活動している人たちもいます。
今回は人物撮影を行う上での「ストリートファッションスナップ」の利点についてまとめました。
僕はストリートフォトグラファーとして、たくさんの人を路上で撮影してきました。
ふだんは出会えない人と出会えるのも、ファッションスナップの面白いところです。
機会があればぜひチャレンジしてみてください。