一眼レフカメラで撮影をするときにはピント合わせが欠かせませんが、その方法のひとつとして「親指AF」と呼ばれるものがあります。
通常のAFとはなにが違うのか、プロもよく使っているテクニックについて見ていきましょう。
長文で専門用語が多めなので、難しいなと感じた方はさらっと流し読みしてください。
目次
親指AF(親指フォーカス)とは?
まず、AFの特徴とMFとの違いについて説明します。
AF(オートフォーカス)について
AFとは、被写体に対して自動でピントを合わせる機能です。カメラのデジタル化が進んだことでほとんどの機種に搭載されるようになり、AFの登場によって誰でも気軽にピントが合った写真が撮れるようになりました。
MF(マニュアルフォーカス)について
MFとは、手動でピントを合わせる機能です。かつてのカメラはすべてMFだったことから敷居が高かったんですが、現在はAFが主流になっています。
AFではピントが合いにくい場面でも正確なピント合わせができるのが利点ですが、熟練した技術と正確性が求められます。
一般的なAFの操作方法は「シャッターボタンを半押し」で実行できます。ピントが合ったら、そのままシャッターボタンを押し込んで撮影します。
親指AFは、シャッターボタンとは異なるボタンでピントを合わせるように設定し、親指でピントを合わせつつ人差し指でシャッターを切るといった操作方法です。ボタンを2つに振り分けることで、より自由度の高い操作が可能です。
通常のAF設定のメリット・デメリット
多くの人が使っている通常のAFについては、以下のようなメリットとデメリットがあります。
通常のAFのメリット
ボタン1つのみでピント合わせと撮影ができる
AF速度の速い機種ならシャッターを押すだけで瞬時にピントが合う
通常はシャッターボタンのみで撮影できるのでカメラに慣れてない人でも便利
通常のAFのデメリット
被写体が中央からずれているとピントが合わせにくい
シャッター半押しのまま構図を整えるのが面倒
通常のAFは、なんといっても手軽なのが魅力です。
カメラには多数のボタンがありますが、この方法ならほぼシャッターボタンのみで撮影できます。
操作も簡単なので、誰でもきれいな写真が撮れるでしょう。
ただし、被写体が中央からずれている場合はピントが合わせにくくなります。
たとえば縦位置で撮影する場合、人物の目にピントを合わせたあと、シャッター半押しのまま構図を決めるといった面倒な手順があります。
これは横位置で撮影する場合も同じで、右端や左端にピントを合わせる場合、半押しという安定しない状態で構図を決めることになるので、コツが必要です。
また、動いている被写体を追いかける際にも、親指AFに比べて時間がかかるというデメリットがあります。
親指AFの使い方
通常のAFに不満があって親指AFを使う場合、機種によって設定が異なります。
上位機&中級機(プロorハイアマチュア向け)の場合
カメラの背面右側に「AF-ON」ボタン(親指AF専用のボタン)があるのでそちらを利用します。
もちろん、好みに合わせて通常AFも使えます。
エントリー機&一部の中級機の場合
基本的には親指AF専用のボタンがないことが多いです。低価格な製品ほど、ボタンが省かれている傾向が強いです。
ただ、多くの機種には背面右側に「AE-L」ボタンなどがあるので、そちらを代用することが可能です。
具体的には、液晶画面内のメニューで、親指AFの機能を該当するボタンに割り当ててカスタマイズします。
ミラーレス機の場合
ミラーレス機はさまざまなボタンが省かれている機種が多く、高性能機でも親指AFが使えない場合があります。
まとめ:
基本的にプロ向けの一眼レフカメラには親指AF向けのボタンが配置されているため、モードを切り替えればすぐにでも親指AFができます。
なお、近年シェアを伸ばしているミラーレス機の場合、親指AF用のボタンが省かれているものが多いです。これはミラーレス機の多くが軽量小型化を優先していることにくわえ、背面の液晶画面で確認しつつ撮影する(ファインダーすら省いた機種も多い)ことが多いのも関係しています。
「AF-ON」(親指AFボタン)がついている機種
「AF-ON」(親指AFボタン)がついているおもな機種のリストです。
キヤノンの場合
EOS 5Dシリーズ
6Dシリーズ
7Dシリーズ
ニコンの場合
D800シリーズ
Dシリーズ
Dfシリーズ
長年カメラを作り続けて多くのシェアを獲得しているキヤノンとニコンですが、主に上位機を中心に親指AFボタンが搭載されています。
初心者にとっては手が出しにくいものの、画質や使用できるレンズの多さから、プロフォトグラファーに愛用されており、親指AFも含めた高度な撮影方法が可能になります。
ソニーやパナソニックなどのミラーレス機に力を入れているメーカーは親指AF専用のボタンがないことも多いので、上位機でもAE-Lボタンに操作を割り当てて使うことになります。(機種によって異なるので確認してみてください)
親指AFが特に便利な撮影ジャンル
親指AFが特に便利だと感じるのは、以下のような撮影です。
・スポーツ(サッカー、ラグビー、F1など)
・野鳥などの自然動物
・子どもやペットの撮影
・運動会などのイベント
・ポートレート
・ライブ写真
・結婚式
これらに共通するのは「被写体の動きが激しい場面が多い」という点です。
一瞬を切り取ることが重要なプロのフォトグラファーが愛用しているのも納得できるでしょう。
また、AFの方法をAF-C(コンティニュアスAF)に切り替えておくと被写体を自動で追尾してピントを合わせてくれるため、より激しい動きにも対応しやすくなります。
撮影ミスが許されない過酷な現場はもちろんのこと、運動会などの記念撮影にも親指AFは役立ちます。
親指AF使用時の注意点
便利な親指AFですが、いくつか留意点もあります。
・操作に慣れが必要
・カメラの機種によって異なる設定が必要
・ほかの人(特にカメラ初心者)が使う場合は初期設定に戻す必要がある
出荷時のカメラは、通常のAFモードに設定されています。
そのため、操作方法をカスタマイズしてしまうと、通常AFに慣れている人にとっては「使いにくい設定」になってしまいます。
カメラをほかの人に貸す場合などは「なんじゃこりゃ?」とキレられることもあるので、要注意です。
たとえば、ひとつの職場(商業写真スタジオなど)で複数の人が同じカメラを使う場合、中には親指AFを利用しない人がいるかもしれません。(というか必ずいます)
その場合は初期設定に戻さないといけないので、面倒が増えます。
頻繁に設定変更を行うと撮影ミスにつながるため、気をつけないといけません。
また、最近はAF-ONボタン未搭載の機種が増えたこともあり(昔に比べて、AF機能が進歩したことが理由と言われています)、親指AFに変更する場合はそれぞれのカメラによって異なる設定が必要になります。
機能が豊富な機種だと、設定変更に手間取ってしまう可能性があります。